未だにふと思い出してはドキリとする言葉があります。
・・・「ドキリ」と言うよりも「ギクリ」と言うのが正しいでしょうか。
それはこんな言葉です。
「"Good"や"Very good"で満足していちゃ駄目。常に"Excellent"を目指しなさい。」
留学先のバレエの先生、Miss Mが口をすっぱくして言っていた台詞です。
実際、生徒に声をかける時、Miss Mは意識的に言葉を使い分けており、「Excellent」と言う言葉が発せられることはほとんどありませんでした。
最初何も知らずにレッスン中「Good!」と言われれば素直に喜んでいたのですが、それがMiss Mの
「まあ、良いでしょ。まだまだ全然足りないけどね。」
と言うメッセージであることを理解した後は、
Miss M: "Good!"
Rinko: (・・・もっともっと頑張れと言うことか・・・)
と背筋が伸びる思いをしたのでした。
日常生活や仕事の中で、一つの作業に慣れてくると「ここまで出来たら、大体良いかな」と言う気持ちが知らず知らず出て来ていたりします。
そんな時、ふとこの言葉が頭を過ぎり、今でも「ギクリ」としてしまいます。
自分に甘くなりすぎていないか。
作業がなあなあになっていないか。
自分でどこかに勝手な線を引いているのではないか。
"Excellent"は一体どこにあるんだろう。
あの言葉は、きっと今後もしばしば要所要所で蘇っては、私の胸を「チクリチクリ」と刺していくのでしょう。

それから、もう一つMiss Mが口をすっぱくして言っていたこと。それは
「舞台の日は綺麗な格好をしてきなさい。」
と言うことでした。
「観に来てくださった方は舞台上でのイメージを持っているのだから、汚い格好やだらしない格好で劇場から出てくるところを見せたらダメ!!髪もきちんと整えて綺麗にしてから出てくること。」
と言う理由からです。
これも厳しく言われていたので、シャワーを浴び、楽な格好でリラックスしたい気持ちをぐぐっと抑えて、皆でもう一度軽くメイクをし直し、髪の毛を整えて、これからデートにでも行くかのような気合の入った格好で帰っていたのでした。
・・・そうやって頑張っていたのですが。
ある日、唐突に「とある食材」を食べたい衝動に駆られ、チャイナタウンに日本食を買いに出かけた時のことです。
ホクホクと商品を見て回っている最中、少し離れた場所に立っていた2人の女性がニコニコしながら手を振っているのが目に入りました。
どなただか分からなかったため、自分に対して手を振っているとは思わず、いったんはそのまま視線を商品に戻したのですが、それでもまだ手を振っていたその方達の方をもう一度見上げてみると、お2人が近づいてきました。
その数日前にあった公演を観に来て下さっていた方達だと言うことが判明し、ちょっと立ち話をして、とても素敵な気分でお別れした後、自分の格好を思い出し、ヒヤリとしました。
すっぴんで。髪も適当に束ねただけで。どうでも良い感じの格好で。手には冷凍の納豆を持っていて。
・・・微笑んでいるのに目が笑っていない、そんなMiss Mの姿が頭を過ぎりました。

