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思わず聞いてしまった隣のテーブルの会話、いきなり話しかけられて思わず友達トーク…。
だけど、アナタとアタシの接点に、過去もなければ未来もない。だって、私たちはアカの他人だもの。
そんな“通りすがり”の関係の中で起こった事件簿です。

香港のナイジェリア領事館に行った時のこと。
受付で、取材依頼をして待っていると、1人のナイジェリア人が話しかけてきた。


「もう、受付はお済みですか?」
「はい。さっき、お願いしました」。
「そう、それなら、良かった」。
「ありがとう」。


いきなりアポもとらず、領事館に来たのは、電話であれこれ説明するよりも、実際に見本紙を見せながら、記事の主旨を説明した方が取材を受けてもらいやすくなるのではないかと考えたからだ。


だから、今日はアポとりを目的とした訪問。


5分くらいすると、また、別のナイジェリア人らしき人が声を掛けてきた。

「もう、受付はお済みですか?」
「はい。さっき、お願いしました」。
「そう、それなら、良かった」。
「ありがとう」。

あれ?デシャブー?
でも、さっき声を掛けてくれた人とは、ちょっと違うかも。

取材についてどのような説明をするか考えていたところだったので、話し掛けてくれた人の外見は、うろ覚えだった。


それから、数分後。
また、ナイジェリア人に声を掛けられた。


「さっきから待っているようですが、受付はもうすませました?」
「はい」。
「それなから良かった」。
「ありがとう」。


香港のナイジェリア領事館は、一体何人のスタッフがいるのだろうか?
この後も、2、3人のナイジェリア人に「受付は済ませたかどうか」話しかけられたが、すべて違う人からだった。


その謎が解けたのは、取材が始まってからだ。

夫はアメリカ人だが、チャイニーズ系で、日本で普通に生活していると、日本人にしかみえない。

西洋人風の旅行客が困っている時に、「お手伝いしましょうか?」と近づいていく夫は、必ずといっていいほど、「ネイティブ並みの英語ですね」と褒められる。

ネイティブ並みというか...、ネイティブなんですけど...。

なぜ、最初にこんなことから話し始めたかといえば、夫と2人で、たとえば電車の中で、会話するとき、どうみても日本人の2人が日本語以外の言語で話していると、何となく注目されてしまう時がある。


今回のテーマは、アカの他人に影響される会話について。

そうすると、電車の目の前に座っていた人たちや、レストランで隣り合わせた人たちが外国語や、海外の話題になっていることが少なくない。


「おまえさ、留学とかって行ってみたい?」
「いや〜、別に。海外とかって興味ないし」。


「レポートやった?」
「ああ、もう出しちゃったよ」。


などなど。


だけど、よくよく観察してみると、これはなにも「日本人同士が外国語で会話している」という変な要素があるから、"アカの他人"の会話に影響を与えているわけではなさそうだ。

「週末どうする?」
「最近、おもしろいことない?」

そんなどこにでもある会話でも、聞こえてくると、ついつい影響されて...。

「そういえば、先週末ってどうしてたの?」
「この前言ってた"婚活"ってどうなったの?」


なんて話題になる。


そう考えると...。


「隣に座った人や、目の前に立っている人なんか、まったく興味はないわ」という顔で、携帯メールを読んでいる人も、実は私と同じように、通りすがりの人に興味津々なのかもしれない。

TITLE : 中間のヒト

 たとえば、見知らぬ人に何かヒトコト言うとき、相手が激しく言い返すような強さを持っているなら、恐らく人は躊躇するだろう。
逆にそのヒトコトで、立ち直れないくらい大きなダメージを受けるようなの弱さを垣間みせれば、恐らく人は言いたいヒトコトを飲み込むだろう。


 アタシはちょうどその中間いる。言いたいことが山のほどある人にとっては、気軽にヒトコト言えるカテゴリーに入る、無害な女
 ヒトコト言っても、「何か困った事態になることはきっとない」と思われているに違いない匂いを醸し出している。きっとね。


 

アタシの特徴4〜無害に見える。

 
 通りすがりの人との会話で、どうにもこうにも消化しきれない気持ちが残ることがある。"いい逃げ"とでもいえばいいだろうか?

 娘が1歳を迎えた年のある冬の日のこと。

 いつものように娘をベビーカーに乗せ、保育園から自宅に向かっていた。その頃の娘は、ベビーカーの上で靴下をぬいでは、それを道路めがけてぽいっと投げ捨てるのが"趣味"だった。
 
 落とされた靴下を拾ってははかせ、また、落とされては拾ってはかせ...を繰り返していると、いつまで立っても家に帰り着かない。だから、"靴下ぽいっゲーム"は2回までつきあい、あとは裸足のまま放っておくことにしていた。
 
 その日も、いつものように裸足になった娘を乗せたベビーカーを押して、家路を急いでいた。
 
 すると、交差点ですれ違ったばかりの自転車がすごい勢いでUターンして戻ってきた。

 

「風邪ひくじゃない! 靴下履かせなさいよ!」


 相手は中年女性。子育てに関して超初心者であるアタシは、この分野のアドバイスはどんなことでも、まずは謙虚な気持ちで聞くことにしている。だから(アタシにしては珍しく)素直な気持ちで聞き返した。

 

「実は履かせても履かせても、ぬいでしまうんです。毛布をかけても蹴ぬいでしまうし...。

 
こういう場合はどうしたら良いのでしょうか?」

 すると、女性。

「知らないわよ! そんなこと。子ども育てたことないんだから!」


 そう言って、再び自転車に股がり、さっさとその場を去ってしまった。

 

ひゅる〜る〜

 
 Uターンしてまでのヒトコト言いに来たのだから、絶対に子育てのベテランだと思ったのに。もしかして、虐待と間違えられた?
その場に残されたアタシの心は...。

「ねえねえ、靴下履いてくれるかなぁ。大人はいろいろあってね」。


 母の心の中に吹く北風に気づいたのか、娘、おとなしく足を出し靴下をはかせる。
 ...あのオバサマのヒトコトも効果があったのかもしれない。

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