学校が始まる前に1週間ほど環境に慣れるための予備日を作っていた。
私は早速、持参した問題集を開いた。
なけなしの金をはたいてきた以上、英語くらい身につけて帰らなければもったいない。時間を無駄に使うのは悔しい。
だが、殺風景な部屋に、お金目当ての人たちとともに粗末な食事を頂いているうちに、次第に負のオーラに影響されるようになっていた。
こういう時に自分の人生を見つめ直してはいけない。
なぜ、考えてもいなかったNZに来て、寒さに凍え、料理の勉強もできないのだろう。
バスの乗り方も分からない英語レベルのアラフォーは、唯一歩いていける海岸に毎日のように足を運んでいた。
毎日、冬のグレーの海を見つめながら、私はいつのまにか、パン屑をカモメに与えていた......。
ベンチのとなりにはお年を召された男性がぶつぶつ独り言を言いながら、一日中座って座って同じことをしていた。
これから人生をやり直そうとしていたアラフォーが、毎日、何もせずにカモメにパン屑を与える生活......。
コル●ンで包丁を握り、輝かしい未来を抱いていたはずだったのだが、廃人同様の隠遁生活。
独身男性どころか、人も歩いていない場所で、大自然だけが話し相手であった。
男性...いや、人とすら話す相手がいなかった...。




